・商品企画支援の前に


□品質とは

品質と聞くと製品の出来栄えと捉えがちですが、
品質の定義は、顧客及び社会のニーズを満たす度合いとしています。
そのため、品質管理の中には顧客満足度向上対策が含まれています。

また、品質保証は顧客及び社会のニーズを満たすために、
組織が行う体系的活動と定義しています。

□マーケティングとは

マーケティングは販売と捉える場合も多いですが、
実は異なります。

販売は「今日の糧を稼ぐためにアクション中心に売り込むこと」です。
マーケティングは「明日の糧を求めて創造的・分析的に成長の仕組みを
構築・実行する」こととと捉えます。
ここで重要なのは明日の糧を求め、明日商品が売れることと、
成長は企業などの組織の存続・発展を意味します。

マーケティングでの商品企画対策として、
市場の拡大と言われがちですが、
品質管理からの商品企画では、商品や製品に焦点を当てて、
その顧客の満足度対策を示します。

□TQMと商品企画とは

TQM(Total Quality Management)の源流は品質管理(QC: Quality Control)にあります。
かつて、戦後日本のものづくりの品質レベルは、決して高いものではありませんでした。
そこで、品質管理に統計的手法などによる「科学的アプローチ」を取り入れ、生み出される
「結果(アウトプット)」(=製品)だけを見るのでなく、
それを生み出す「プロセス」(=製造工程)を改善することで
日本製品の品質を格段に向上させることに成功しました。

この「科学的アプローチ」や「プロセス重視」という基本的な考え方は、
製造部門のみならず、他の部門の業務の改善においても適用可能なものでした。
そして、この考え方に、個人の能力向上や組織的な活動を加え、
全社的な取り組みに発展させたのがTQMです。
このTQMの実施により、さまざまな部門の水準が向上し、
全社的なパフォーマンスや、製品・サービスの品質・価値の向上をはかることが
できるようになりました。

いまや、世界を相手にした競争の中では、ただ単に品質が良い、
価格が安いというだけでは生き残れません。
変化する市場の中で、いかにしてお客様から求められる品質や共感される価値を生み出すか、
が重要なポイントになります。
そのためには、戦略・企画・設計・技術・製造・販売・サービスなど、全ての部門、
全社において品質や価値を理解し、それらを生み出そうとする取り組みが必要になります。
TQMは、全社で品質と価値を追究するための最適な取り組みです。

引用元http://www.juse.or.jp/tqm/about/02.html

TQMでは、各プロセス・目的に応じたさまざまなツール(手法)が活用されています。
上記の”しくみ””しごと”における取り組みのベースになるのは、そこで働く”ひと”です。
人材育成を通じてこれらのツール(手法)を普及させ、活用することにより、
“しくみ””しごと”における取り組みの精度が向上し、
さまざまな効果を得ることができます。たとえば、5SやPDCAなどの基本的な考え方や、
統計学をベースにしたさまざまな手法に加え、それらの手法を組み合わせて戦略立案や
商品企画を効果的に行うツールセットや、
問題解決や課題達成などの思考フレームなどがあり、さまざまな企業で活用されています。
このように、科学的アプローチと組織的アプローチをプロセスに適用することで、
業務プロセスの効果・効率の向上や、品質の向上に絶大な効果を発揮します。

引用元http://www.juse.or.jp/tqm/about/06.html

TQMの手法群に商品企画七つ道具は推奨され、
商品企画時に活用するとよいとされてます。

□魅力品質と商品企画とは

狩野モデル(1984)という品質のライフサイクルを分類するが提唱されました。
狩野先生は「不満をもたらす品質」と「満足を与える品質」とは異なる点を
研究され、縦軸に顧客の満足感、横軸に物理的充足状況を取り、
当たり前品質、無関心品質、一元品質、魅力品質と分類しました。
満足感が高く、物理的充足度が高い魅力的品質の創造が重要としています。

例えば
スマートフォンの新たな魅力を創出するために、
ハイレゾ対応、曲面液晶を採用しました。
これらは世の中にないので、魅力的品質になります。
これらの機能が顧客に評価され、他社もこの機能を追加すると、
一元的品質になり、さらに一般的なに普及すると当たり前品質となります。

魅力品質を創造する商品企画手法は構築されておらず、
この点も考慮し、手法の研究が行われました。

□商品企画のシステム化とは

システムとはインプットとアウトプットが揃っていて、
何かが入力され、処理機構で処理された結果が出力されます。
さらに、システムにはフィードバックという戻り工程も存在します。

品質管理では工程管理において徹底的にシステム化、プロセス化を追求し、
不良低減はもとより品質向上に寄与しました。

一方商品企画分野においては、属人的な経験則、感、度胸といった
不確実性要素や変動要素が大きく、経営判断にリスクを生じています。

これらの不確実性を少しでも少なくし、属人的な要素から、
システム化、プロセス化を行うための思考が行われました。

□魅力品質を創造する商品企画とは

魅力品質を創造する商品企画とは顧客のニーズを発掘して、
それにふさわしい商品コンセプトを考案・決定し、
商品化への橋渡しをすることと定義しています。

□潜在ニーズの発掘

先に紹介した魅力品質を創造するためには、
顧客価値創造の中での潜在ニーズの発掘が必要と言われます。
顧客要求である顕在ニーズを実現するのはもとより、
さらなる魅力創出するためには、顧客も知らない潜在ニーズを発掘することが重要です。

潜在ニーズを発掘するためには顧客や生活者の中に入り込んで、
顧客が声として発信しないない行動から見つかります。

□売れる商品とは

商品の売上げを基本要素の少数に絞って特定することにしました。
少数にするためには、基本原理、原則化し単純化や標準化するためであります。

基本的な新商品開発の流れとして、
①コンセプトの決定
②研究開発
③事業化
これらを考慮して、プロセス要件を遡る必要があります。

根本的な命題として、売上は以下の2つの要素によって規定されます。
①売上=商品力×販売力

・販売力=広告宣伝×営業×流通×サービス

商品力とは顧客が買いたいと思う商品の魅力としています。
目標は商品力が高く、販売力が高いものを目指します。

次に商品力を考えます。
方法論は確立するために、敢えて魅力的な商品の創造に眼目しています。

②商品力=品質×価格×感動

・品質とは、商品の基本的機能の総称であり、無論高品質を目標とします。
また、品質には「顧客の要求に適合したかどうか」の定義もあります。

・感動は創造性が高く、潜在ニーズへの適合性の両方の意味があります。

③感動=創造性×潜在ニーズ適合性

・創造性には商品に驚きの要素があります。
・潜在ニーズへの適合性では新しい喜びの要素があります

これらの公式を実現するためには
①幅広い顧客の潜在ニーズを発掘すること
②創造的なアイデアを展開すること
③最適な品質、適切価格を設定し、顧客要求を満たしていること

方法論として
①調査手法
②発想手法
③最適化手法
④企画と技術の橋渡し
以上を満たした手法が研究され、考案されます

□商品企画七つ道具の誕生由来

商品企画七つ道具は、1995年11月に初の書籍として紹介されています。
この監修をされた飯塚悦功先生の序文を紹介致します。

当時のTQCとマーケティングとの融合をはかるべきと問題意識があり、
TQCにおいて顧客ニーズの把握は中心的課題であるはずなのに、
品質管理分野の担当はニーズ把握において重要なはずの
マーケティング分野の固有技術に十分精通しているとはいえず、
これらを解決する必要がありました。

TQCには、要求品質と製品特性との関連の正しい把握による合理的に
製品仕様を支援する手法として品質表とゆう有力な手法があります。

しかしながら、品質表への入力となる要求品質の列挙と構造化に関しては、
KJ法的整理以上の確たる方法論を持っていません。

市場調査の方法、市場の構造の理解の仕方、調査データ解析法など
マーケティング分野にはTQCが取り込んでしかるべき手法が多々あり、
TQCにおいて、新製品開発における源流管理としての商品企画の重要性は
当時の10年以上前から指摘されていました。
改めてマーケティング技術とTQCへの融合が望まれるとゆう強い危機感がありました。

上記の趣意書は各方面の賛同を得て、1990年の6月末に設立準備会を開催しました。
その会はTQC Research Group)という名称をつけて活動を開始しました、

テーマごとにワーキンググループを組織した。その1つが神田範明先生をリーダーとする
「商品企画とマーケティング」ワーキンググループでした。

このワーキンググループは、コトラーなどのマーケティング手法の研究と、
マーケティング分野のプロパーの方に面談をするなどして、
取り組むべき課題をより具体的な形にしていきます。

一つの大きなねらいは、「品質機能展開」の上流に位置すべき手法や概念を整理し、
無理なくTQCと融合することででした。

これら調査・研究の内容が、1992年4月に開催した。
TRGの最初のワークショップの場で報告された。このワークショップでは、
この後の研究の方向を決める以下のような「提案」をしています。

・アイデア創出技法はQCでも重要である。
これらの技法をさらに研究・改良し、新しい道具としてQCに取り入れられると思われる。

・製品コンセプトが製品アイデア創出のあとに定されるのはおかしい、
コンセプトの方向を定めてからそれに合った製品アイデアを求めるべきである

・QCでは品質のみに固執しがちだが、「売れる」ためには、
その他に「プランド」「パッケージ」「広告」「流通」「価格」などの広い考が必要である。
これらを包括的に解析する体系的な方法論が望まれる。

・マーケティングとは消費者の心理をつかむことでもある。
したがって心理学(行動科学)的な考察が必要となる。
これはQC側では欠落しているか、弱い点である。

・マーケティングでは「テスト」を意外なほど重視しており、実験計画法の活用が期待される。

その後は、TQC界へのマーケティング手法および概念の啓家と普及のために、
高邁な理屈よりは実践ですぐに使えるようにすることの重要性を認識して、
ひと組の道具として提案することをめざした研究が続けられます。

道具の数は7つでなくてもよいのだが、普及のしやすさを考えて7つにこだわります、
どのように7つに整理するか、紆余曲折があったことをここでお伝えします。

1993年の第2回ワークショップでは、「商品企画七つ道具」(P7)の原型を発表し、
多くの有意義なコメントをいただきました。

そして翌1994年には、公開のTRGシンポジウムを開催し、
そのときワンセットの道具としての「P7」を提案がされます。
反応は良好であったが、批判もあった、
「既存のマーケティング手法の寄せ集めでないか」と批判がありました。

飯塚先生としては、わかっていないとゆうのが正直な感想であり、
2つの点でわかっていない、まず第1に、たとえ寄せ集めであったとしても、
これらの道具をどのように「商品企画プロセス」で用いるかの指針を与えるだけで価値がある、
実践に用いるための適用ガイドの重要性がわかっていない。

第2に、それぞれの手法に対する TQCの立場からの改良が加えられており、
決して単なる寄せ集めではない。

「P7」は従来のTQCに不足していた調査、発想、市場構造のモデルになるの方法論を
マーケティング分野から採用し、QC手法との併用により、
商品企画の新しい潮流が生まれればよいと願って提案します。
TQCにおける商品企画プロセスのあり方に対する1つの提案です。

この提案は、「品質管理』誌の1994年7月号からの連載講座でも紹介し
同じ1994年の品質月間テキストの1冊としても紹介されます。
普及のためにセミナーも日科技連で開催されました。

初期の商品企画七つ道具の書籍は、こうした活動を基礎としてまとめられたものです。

参考
※商品企画七つ道具の提唱当時である1995年に出版された「商品企画七つ道具」日科技連出版の序文

□商品企画七つ道具の全体像

商品企画のステップは、
顧客ニーズの把握から始めます。既存商品の改良する場合には、
その商品の現状に対する不満点や改良点を顧客に聞くことが
要求把握から始めます。

新規商品は顧客の潜在ニーズを把握することが重要です。

商品企画七つ道具においては、
グループインタビューや評価グリッド法二よりニーズ把握から始めます。
この調査から得られたニーズはあくまで仮説にすぎなく、
表面化した潜在ニーズが真に顧客の期待と合致しているか確認をします。
そのために、商品企画七つ道具では企画側の仮定した顧客ニーズを検証するために
アンケート調査を実施するように位置づけています。
アンケート調査は仮説の検証に適しているからです。
顧客のニーズが検証できても、全てのニーズを満たす商品を企画することはできず、
ニーズ間の関係性を把握して企画の方向についてのベクトルを探る必要があります。
顧客の要求、期待に添った方向を探る必要があります。
商品企画七つ道具ではポジショニング分析によって、ニーズの空間布置を決め、
企画の方向性を示すベクトルを検討します。

企画の方向が定まると、具体的な商品化に向けて、仕様を決める必要がありますが、
創造性が高いアイデアを創出するためにアイデア発想法とアイデア選択法によって、
企画を進めていきます。

商品企画七つ道具の特徴として、仮説立てと仮説の検証が常に顧客に対して行われている点があり、
ニーズの把握においてインタビュー調査で仮説立てされ、
アンケート調査とポジショニング分析によって仮説の検証が行われます。
具体的な商品化においても、アイデア発想法とアイデア選択法によって、
仮説立てが行われ、コンジョイント分析によって仮説の検証が行われます。

7番目の手法として、品質表によって設計とのリンクが行われます。
品質表は商品企画七つ道具の選考の中で、七番目に決まっていました。
それは、品質表につなげるための他の手法の選択の研究が行われたためであります。

□商品企画七つ道具と関連手法

商品企画七つ道具をより深く理解するためには、
関連するQC手法に対する知識が必要になります。

QC手法とは、統計分析を活用した多変量解析、実験計画法、
七つ道具の王道であるQC七つ道具や新QC七つ道具、
品質表に代表する品質機能展開があります。

商品企画七つ道具の生まれた背景として、
マーケティングとQCの融合から検討された過程で生まれた手法群であります。

ニーズの把握では、マーケティング手法である
インタビュー調査が用いられます。
そのまとめはQC手法の親和図や連関図を用いるとわかりやすいのです。
特にグループインタビューを実施したとき、
親和図や連関図法の知識があるとまとめやすいのです。

アンケート調査では、統計手法である多変量解析の実施を考慮しながら
調査票の設計をすると、数値化や統計手法が有効になります。
ポジショニング分析にて活用する因子分析やコンジョイント分析で活用する
数量化Ⅰ類や実験計画法を活用することを念頭に設計すると、
統計解析ができるアンケート調査になります。

ポジショニング分析の実施では、
因子分析と重回帰分析の活用するアンケート設計がされていれば、
顧客の時系列変化を把握しながら解析ができます。

アイデア発想法においては、商品企画七つ道具においては
アナロジー発想法、焦点発想法、シーズ発想法を取り上げていますが、
ブレーンストーミングやNM法、キー・ニーズ法を用いると発想法が広がります。
発想から得られたアイデアのまとめは、親和図や連関図法、系統図がまとめやすい。

コンジョイント分析ではQCで必ずと言って取り上げられる
実験計画法、その中でも特に直交配列実験の知識があると理解が早いです。

企画から設計へのリンクでは、
SQC手法として多変量解析法、実験計画法、信頼性工学と、
品質機能展開(QFD)の知識があると理解がさらに深まります。
品質表は品質機能展開の考え方を実現する1つの方法です。

□商品企画七つ道具の流れ


商品開発の流れに沿って、以下の流れを提唱しました。

1995年に提唱された商品企画七つ道具の流れ
①グループインタビュー
②アンケート調査
③ポジショニング分析
④発想チェックリスト
⑤表形式発想法
⑥コンジョイント分析
⑦品質表

手法の改良点
グループインタビューは重要ですが、生産財では使いづらい面もあります。
そのため、製品が特定されていれば使いやすい「評価グリッド法」を導入して、
インタビュー調査とします。

発想法の発想チェックリストは他の手法と比べると、内容が小さく同系列になりません。
表形式発想法の組み合わせ発想法はあまり使いません。むしろ焦点発想法の方が
簡便で使いやすい。
発想法で出てきたアイデアを絞り込むプロセスが難しい。
アイデア選択法を導入し、を評価する方法を取り入れました。

改良された2000年の商品企画七つ道具
①インタビュー調査
②アンケート調査
③ポジショニング分析
④アイデア発想法
⑤アイデア選択法
⑥コンジョイント分析
⑦品質表

手法の概要

①インタビュー調査

「グループインタビュー」は数名の対象層の顧客に集まってもらい、
グルーブ内コミュニケーションの相乗効果から顧客の潜在ニーズ仮説発見を期待する手法です。
仮説の検証もある程度可能です。
できれば企画担当者自身が生々しい意見を直接聞くと顧客要望が明確になり有効になります。

「評価グリッド法」はサンプル商品やデザイン、仮想イメージなどを個々の
顧客に比較評価してもらい、自身の言葉で表現してもらう手法です。
顧客の評価構造がよく把握でき、顧客の意外な要望が得られます。
グループインタビューとは相補的であるので、目的により使い分けます。

②アンケート調査

アンケート調査は最もポピュラーな調査手法であるが、グループインタビューまたは
評価グリッド法と組み合わせ、事前に顧客に商品評価などを深堀りしておくと有効です。
ニーズの発見よりも,商品検証が第1の目的であります。
統計学、とくに多変量解析の知識があると、
分析を意図したアンケート設計ができるので検証には効果的です。

③ポジショニング分析

アンケート調査で商品評価を行い,集約された総合的な軸を描き、
各商品ごとの中心位置を図示したマップを作成します
このマップ上で, 1)商品の位置の分布状況,とくに既存商品や仮想商品の位置を検討します。
2) 顧客の意識の「すきま」を客観的に発見します。
3) 顧客が購買意欲を高めるような理想的方向をマップ上に図示します。
この方向上にすきまや仮想商品があれば、企画の方向がわかり有望です。

④ アイデア発想法

発想法ではなるべく多くのユニークなアイデアをだし、
調査段階で得た方向性を基準にして絞り込みを行います。
画期的なアイデアを大量生産する「アナロジー発想法」「焦点発想法」など、
4種のシステマティックな発想法を活用します。
ここで前段までの企画の方向を念頭に入れつつも大いに創造性を高めることが重要です

⑤アイデア選択法

大量のアイデアから質のよい、顧客要望に満たした2~3のアイデアに絞り込む手法。
「重み付け評価法」はウェイトを決めて顧客(または企画担当者)が点数評価します。
「一対比較評価法」は AHP という手法で、
重みであるウェイトもアイデアも2つずつのペアを比較評価して、
まとめ上げる方法である.絶対評価よりもやりやすいが、
比較する数が多いと負担が重くなるので,少数のアイデアの評価に適します。

⑥ コンジョイント分析

前項で選択したアイデアやこれまでの確定方針を取り込んで、
コンセプトの細目を最良なものに(総合的な商品力を最大に)仕上げるのに有効な手法です。
各アイデアの重要な要素(たとえば価格,材質,色, デザイン,付加機能など)を取り上げ、
これらの組み合わせを作成し、顧客に提示して評価してもらいます。
そのデータを解析して最適な組み合わせを求めれば、
それが自動的に新商品の「最適コンセプト」となります。

⑦品質表

前項で得た最適コンセプトを基本に,顧客側として実現すべき要求を系統的に整理します。
つぎにそれと関連をもつ技術特性を列挙する「要求」と「技術特性」をマトリックス状に関連づけ、
コンセプトを的確に技術の言葉に変換します。
重要特性や開発のネックもこの表のなかから明らかにできます。

□商品企画七つ道具のインプットとアウトプット

商品企画七つ道具はシステム化されていますので、
これらの工程にインプットとアウトプットがあります。

①顧客の意識→インタビュー調査→顧客のニーズの仮説
②アンケート調査項目→アンケート調査→評価データ
③評価データ→ポジショニング分析→企画の最適方法
④企画の方向→アイデア発想法→有望アイデア
⑤アイデア→アイデア選択法→重要アイデア
⑥重要アイデア→コンジョイント分析→最適コンセプト
⑦最適コンセプト→品質表→特性、設計値

□新・商品企画七つ道具の流れ

従来の流れにおける問題点
①インタビュー調査
②アンケート調査
③ポジショニング分析
④アイデア発想法
⑤アイデア選択法
⑥コンジョイント分析
⑦品質表
インタビュー調査やアンケート調査で評価する内容が、
既存商品になりやすい、アイデア発想法が後半にあるために、
創造的なアイデアが出ても十分に検証されない点がありました。

①インタビュー調査
②アイデア発想法
③アイデア選択法
④アンケート調査
⑤ポジショニング分析
⑥コンジョイント分析
⑦品質表

アイデア発想法を先に持っていき、アイデアを先に出す方法も
ありますが、ここでも問題点がありました。
インタビュー調査が出発点なので、ここで顧客要求が満たされないと、
仮説案が評価されない危険があります。
そこで、顧客要求を多々得るために
インタビュー調査の対象者が多くする必要があり、
ここで費用対効果が得られない可能性がありました。

これらの問題点から、
新たに仮説発掘法を導入し、以下の流れを提唱しました。

□新・商品企画七つ道具の流れ


①仮説発掘法
②アイデア発想法
③インタビュー調査
④アンケート調査
⑤ポジショニング分析
⑥コンジョイント分析
⑦品質表

手法の概要

(1) 仮説発掘法

顧客情報を得て、顧客の要望と潜在ニーズを発掘する方法です。
2つの手法を用意しています。
①フォト日記調査は、顧客が撮影した写真とコメントで構成され
使用実態や意識・不満などを発見し、そこから企画者自身が多様な仮説案を創出します
②仮説発掘アンケートは、顧客要望を自身に記述してもらうアンケートです。
記入しやすい工大の数々によって、大量の顧客要望である仮説案を顧客から得ることができきます。

(2) アイデア発想法

発想法ではユニークなアイデアを企画者自身が短時間に多数創出できる手法です。
3種類の特徴の異なる方法があります。

①焦点発想法は,初心者でも活用できる簡単かつ万能な連想型の発想法です、
1時間で30件程度のアイデアを創出できます。

②アナロジー発想法は,常識を逆転させる発想法で、画期的なアイデアを一気に創出できます。
既存商品の固定観念を覆したい場合に向いています。

③ブレインライティングは、数名のグループで知恵を出し合って短時間にアイデアを創出したいときに向いています。

(3) インタビュー調査

ここまでで得た仮説の実現可能性などを評価して10~20件程度に絞ったうえで、
インタビュー調査で顧客の意識・欲求などを探り、
仮説を定性的・直観的に検証します
①グループインタビューは、数名の顧客のグループディスカッションで仮説案の評価をしてもらい、
修正や追加・削除を行います。
②評価グリッド法は、顧客と一対一で仮説案を2つずつ比較評価してもらう方法で、
顧客の評価構造が明確に把握でき、初心者でも簡単に実施できます。

(4) アンケート調査

最もポピュラーな手法であるが、NeoP7では、仮説の定量評価を第一の目的とします。
通常10項目前後の評価項目を用いて5段階評価で各仮説を評価してもらい、
グラフ化して仮説案を比較し、改善すべきポイントを明らかにします。

(5) ポジショニング分析

アンケート調査で得た仮説の評価点を用い、「因子分析」で集約された総合的な軸を描き、
各仮説ごとの位置を表示したマップをつくる、
顧客が購買意欲を最も高めるような方向(理想ベクトル)を
表示し,簡単に最良の仮説案と各軸の重要度を見出すことができます。

(6) コンジョイント分析

コンジョイント分析は、コンセプトの具体化する手法である。
性能、付加機能、材質、デザイン、価格などの
商品構成要素を組み合わせた具体的組み合わせ案を作成し、
商品に近いイメージを顧客に提示して評価してもらい、
そのデータを解析して最適水準の組合せと、購買意向の点数を求めます。
「顧客の意見」から商品コンセプトが決定されるので、最適な仕様が決定できます。

(7)品質表

コンジョイント分析で得た最適コンセプトを基本にして、
顧客側として実現してほしい要求期待事項と、
それと関連をもつ技術特性を列挙して両者をマトリックス状に関連づけ、
コンセプトを技術の言葉に変換する.これによってコンセプトを技術的に実現する道を開き、
重要特性や開発のボトルネックもこの表からの中から明らかにできます。

□商品企画七つ道具の有効性

商品企画七つ道具は1990年代前半から研究され、
大学での学問、企業研修、企業支援にて継続して活用されています。
現在は、日本文理大学 経営経済学部経営経済学科 小久保雄介准教授が
商品企画七つ道具を研究しています。
また、P7かんたんプランナーの開発者でもあり同時並行でさらなる改善、改良、
誰にでも使えるよう研究開発をしています。

1)使いやすさ
学者の研究なので、長大な時間や多大な手間が掛かるものではなく、
学問でもあり、企業でも実践できる方法論としています。

2)実績がある
実績があり、成功事例があり、継続して活用されています。

3)単独でも有効
7手法全て使うのではなく、目的や課題に応じて1手法でも活用できます。

4)ソフトを活用し分析できる
顧客調査における統計分析が肝ですが、分析するソフトが無料で提供されています。

□商品企画七つ道具の事例


<1>女性向け賃貸住宅

企画の背景
・賃貸住宅において女性向けが少ない
・女性20歳~30歳代は男性より家賃が高い
・女性への賃貸は物件オーナーへ魅力的である

①仮説発掘法:仮説発掘アンケート
・賃貸住宅住まいの女性対象

アンケートの内容
・住まいの好きなところ
・その理由
・住まいの嫌なところ
・その理由
・新しいアイデア出し

②グループインタビュー
対象者
・女性、一人暮らし、首都圏1都3県、会社員、賃貸居住者
・間取りワンルーム、1K、1DK、1LDK
・家賃15万円以下

シナリオ
・賃貸物件選考理由
・困っている点
・気に入っている点
・収納、キッチン、エクステリア、浴室、洗面、インテリア、トイレ
・設備の印象
・気になった点
・あって当たり前の設備
・不要と思う設備

③アンケート調査
対象者
・女性、20歳代~40歳代
・賃貸アパート、マンション居住者
・1都3県
・家賃月額5万円~15万年未満
調査内容
・住まいの状況
・日常の意識
・家事の状況
・仮説に関する生活上の質問
・仮説案の評価
仮説案
・安全対策
・自分好み
・美しくなれる設備
・リラックスできる設備
・片付けしやすくするための仮説
・清潔に保てるための設備
・プチ贅沢ができる設備
評価用語
・落ち着けそう
・手入れがしやすそう
・安心できそう
・女子力が上がりそう
・便利そう
・愛着がわきそう
・おしゃれそう
・時間短縮できそう
・楽しそう
・住みたい(総合評価)
アンケート調査結果
・家賃の条件を入れたため,
回答者の大半は30歳代の比較的高収入の方が多い
・間取りの形態は半数以上が1Kである.
また,30歳代では1DKが多かった.
・住居の設備についてはエアコン付き,
バス・トイレ別は当たり前となっており,
宅配ボックスや追い焚き機能はまだまだ普及していない

仮説案評価
・手入れがしやすそう,
・女子力が上がりそう,
・便利そう,
・時間短縮できそう
が他の仮説と異なり評価が高かった項目である
これらの評価項目が最終的に住みたいという評価に影響を与えている

④ポジショニング分析

・アンケートデータを用いてポジショニング分析を行った結果
3因子のモデルになり,高揚感,快適さ,時間短縮という因子が得られた
3因子の影響度の比は12:15:4となっている
また,各セグメントで層別の分析を行っても各仮説のポジショニングマップにおける
位置はさほど変わらない結果

ポジショニングマップを見ると理想ベクトルの方向に仮説はなく,
高揚感×快適さのマップではベクトルに対して垂直に仮説が分布

高揚感×時間短縮のマップでも似たような状況
スネークプロットで上位であった
3つの仮説(C美しくなれる,Dリラックスできる,F清潔に保てる)については
3つの因子のどれかが足りないという状況

⑤コンジョイント分析

ポジショニング分析の結果から属性と水準を考案しました。

レイアウトの属性と水準

・廊下のタイプ:(中廊下、外廊下)
・住戸・廊下のレイアウト:(雁行型、L字型、直線型)
・バルコニーのタイプ:(サンルーム、バルコニー)
・キッチンの形状:(対面、壁付き)
・収納:(固定、可動)
・アウトドア収納:(玄関土間、共有スペース、なし)
・庭:(自分専用、共有、なし)
・女性専用:(1棟毎、1フロア、専用なし)

最適水準(一部省略)
・廊下のタイプ:中廊下
・住戸・廊下のレイアウト:雁行型
・バルコニーのタイプ:サンルーム
・キッチンの形状:対面
・収納:固定
・アウトドア収納:玄関土間
・庭:共有

機能の属性と水準

・空調:(自動空気調整システム、エアコン)
・便利・安心:(電気の消し忘れアラーム、鍵の閉め忘れアラーム、なし)
・癒やし・リラックス・美しさ:(ミストサウナ、炭酸水シャワー、なし)
・美しさ:(ドレッサー付き洗面台、居室内に備え付けドレッサー、なし)
・清潔に保つ:(自動洗浄付き浴室、汚れない浴槽、自浄機能なし)
・飲料水:(浄水器、ウォーターサーバー完備、水道水)
・天井近くデッドスペース収納:(あり、なし)
・入居者専用webサイト:(あり、なし)

最適水準(一部省略)
・空調:エアコン
・便利・安心:鍵の閉め忘れアラーム
・癒やし・リラックス・美しさ:ミストサウナ
・美しさ:ドレッサー付き洗面台
・清潔に保つ:汚れない浴槽
・入居者専用webサイト:あり

<2>オフィスチェア

企画の背景
・受注先の要求品質を満たせば売れるオフィスチェアから、
エンドユーザーが欲しいオフィスチェアへ転換
・オフィスチェアはそこにあるから座るから、
座り心地が良く、疲れなく、業務効率がある椅子へ
価値転換を行う

①フォト日記調査
・オフィスにおけるリアルな椅子の使用実態を把握

記録内容
・オフィスワークの様子
・椅子の周り
・椅子に座っての様子

仮設抽出
・最も特徴的なことは,3分の2近い回答者が「背もたれ」をあまり~ほとんど使っていない

②仮説発掘アンケート
内容
・座っている椅子の良い点、不満点とアイデア出しを行った

③アイデア発想法
内容
焦点発想法、アナロジー発想法、ブレーンライティング活用
138件

④グループインタビュー
内容
① オフィスチェアの使用実態とユーザーの意識を探索
・使用しているオフィスチェアについて
・仕事内容と着座時間について
・仕事中の姿勢について
② 仮説19件の評価とその理由

共通意見
ⅰ フリーアドレス(自由座席)の場合,他人がつけた汚れが気になる
ⅱ オフィスなので,購入金額が高くなるのであれば,付加的な機能はいらない
ⅲ オフィス内の統一感を重視したい

顕著な意見
・(男性から)座っているときに蒸れるのが恥ずかしい.
・(女性から)良い姿勢,美しい姿勢で座っていたい.

仮説の評価については椅子の根本的な機能である「姿勢」,
「座り心地」,「清潔」といったものに関する仮説は評価が良く,
付加機能についての仮説はあまりいらないという結果

⑤アンケート調査
内容
・アンケート調査は約1万名の予備調査
・20代から50代のデスクワークを2時間以上行う会社員・公務員
・本調査は予備調査から400名抽出
・オフィスチェアに対する不満や仕事中,休憩中の着座姿勢などについての質問
・仮説19件とインタビューで得られた仮説1件の評価

スネークプロット
・総合評価の高かった仮説8件についてのスネークプロット
・仮説は評価の傾向は似ている(大きく動きの異なるものがほぼない)
・特徴として「疲れなさそう」、「座り心地が良さそう」、
「長時間作業でも問題なさそう」の点数が高い

⑥ポジショニング分析

各因子を「長時間でも疲れない」,
「便利」,
「清潔」と意味づけし,
因子の重要度の比率は53:45:18
「長時間でも疲れない」,「便利」が特に重要な要素

⑦コンジョイント分析

属性と水準
・姿勢への対応
・体圧分散
・健康維持の工夫
・清潔
・省スペース対応
・デザイン
・価格

最適水準
・デザイン:丸型
・背もたれ部:アイデアB
・座の部分:左右傾き
・体圧分散:座面が動く
・健康維持:背ストレッチ
・清潔:蒸れにくい
・省スペース対応:アイデアF
・価格:3万5千円

まとめ
エンドユーザーの使い方や考え方をヒントに仮説を立て,
多数のユーザーの評価データから検証する。
この流れがB to B企業であっても極めて有効であることを実体験できた。
今後の企画・開発の指針となった

<3>家電サービス

企画の背景
・家電業界を取り巻く環境の厳しさから,
積極的にサービス強化を図る必要性があり,
A社の要望に応えて,大量の新サービス仮説を発掘できるNeo P7を
用いて企画開発を行った.

①仮説発掘アンケート
(1)普段行っているエコ活動
(2)なぜエコ活動を行うのか
(3)エコ活動で面倒なこと
(4)家電メーカーに行ってほしいエコ活動(具体例)
(5)家電量販店に行ってほしいエコ活動(具体例)

②アンケート調査、ポジショニング分析
仮説案と評価用語

③コンジョイント分析
属性と水準

評価が高いクラスター
① 家電に詳しく,衝動買いをする.
② スマホの機能なども使いこなし,節電への意識も高い.
③ 年収は200~500万円ぐらいの人が過半数を占める.
④ 男女比はほぼ同じ,戸建て住宅に住む20~39歳ぐらいが多い.
⑤ 普及率の低い家電も所持している(太陽光発電システムやエコキュートなど)

最終提案
コンジョイント分析で得られた最適水準を採用する内容

【購入前に受けられるサービス】
① 購入前に商品を持ち帰り,一定期間試用できる.
② アドバイザーが自宅を訪問してどんな商品を買ったらよいかのアドバイスをしてくれる.
【購入後に受けられるサービス】
③ 現在の各家電にかかっている電気料金がわかる.
④ サービスマンが自宅を定期的に訪問し,要望に応じた購入後のメンナンスをしてくれる(配線やファンのホコリ取りなど).
⑤ 故障を予測して,自動的に機器のソフトウェアのアップデートをしてくれる.
⑥ 家電の動作状態に問題があったときに,外出先でもスマホに知らせてくれる.