問題解決型の商品開発としてQFDやVE(バリューエンジニアリング)を導入したものの、「新商品が思ったほど売れない」「手法だけ導入しても成果が出ない」という悩みは少なくありません。 動画では、素材産業のある案件を題材に、「なぜ問題解決型商品が機能しなかったのか」を構造的に分析し、手法導入の限界と本来あるべきプロセスを整理しています。

顧客要求が見えないまま手法だけが先行した
案件の背景には、主力商品の競争力が低下し、問題解決型商品の導入に期待が集まっていたという状況がありました。 そこで、VEとQFDを中核とした開発支援が構想されましたが、実際には「顧客要求が整理されていない状態」でプロジェクトがスタートしてしまったと説明されています。

本来は、顧客の課題や不満を把握し、それを顧客要求として構造化したうえで、要求品質(顧客要求品質)を定義し、そこから技術展開・商品決定へと進む必要があります。 しかしこの案件では、VE→QFD→調査→商品の検討という順序で進められ、肝心の「顧客要求の構造化」が抜けていた点がギャップとして指摘されています。

QFD・VEではなく「前提」が問題だった
VEは「必要な機能を最小コストで実現するために、機能とコストの関係を分析する手法」、QFDは「顧客要求を設計・製造要素に展開し、商品に体系的に落とし込む手法」として解説されています。 つまり、VEは「どう作るか」を最適化する手法、QFDは「何を作るか」を構造化する手法です。

QFDには前提として「顧客の要求項目・期待項目が出ていること」が必要ですが、この案件では顧客要求が曖昧なまま機能展開だけが進められてしまいました。 その結果、問題解決型の取り組みがいつの間にか「機能寄りの改善」へとすり替わり、手法だけが形骸化する状況に陥ったと総括されています。

調査設計と運用の問題:誰に・どう聞いたのか
プロセス面の要因として、仮説発掘や調査設計が「テクニック重視」に傾き、顧客要求の本質に迫れなかった点も挙げられています。 調査対象も「回答しやすい人」を中心に実施してしまい、実際の消費者を十分に捉えられていなかったことが問題として指摘されています。

また、アンケートからポジショニング分析を行う際の前提条件も欠けており、結果として「手法のための手法」になっていたとされています。 顧客要求が曖昧なまま、技術的な視点だけで最適化を進めたため、分析や検討が顧客不在・消費者不在になってしまったという反省点が共有されています。

組織・運用面の構造的要因
構造的な要因として、人・方法論・調査対象・組織体制の4つが整理されています。

人:手法経験の差が大きく、専門家が不在、または関与が間接的で、経験値が十分伝達されなかった。

方法論:テクニック重視で本末転倒になり、問題解決の視点より手法運用が目的化していた。

調査対象:調査しやすい相手に偏り、実際の顧客・消費者の声が十分反映されなかった。

組織体制:権限移譲が不十分で、予算制約もあり、手法を活かせる運用条件が整っていなかった。

ここで強調されるのは、「QFDやVEそのものが悪いのではなく、それを使える前提条件が整っていない状態で導入したことが問題だった」という点です。

本来あるべき問題解決型商品開発プロセス
教訓として整理されている、本来の問題解決型商品開発の流れは次の通りです。

顧客課題の深掘り(顧客課題・不満の把握)

顧客要求仮説の構築(要求の構造化)

調査設計・調査実施・分析・考察

手法の選択(QFD・VEなどはここで必要に応じて使う)

商品化・技術展開

つまり、「手法は最後に使うものであり、出発点ではない」という位置づけです。 顧客要求が明確で、運用条件(権限・予算・専門家)が整っていれば、QFDやVEは大きな効果を発揮しますが、今回の案件はその前提を飛ばしてしまったことが構造的な失敗要因だったとまとめられています。