前回の「弁当容器の未充足ニーズ発掘」では、メーカー視点と消費者体験のずれから新しい仮説を見出すプロセスが整理されました。 今回はその続編として、「出てきた未充足ニーズ仮説をどう優先順位づけし、どれを開発テーマに採用するか」を、コンジョイント分析的な発想で検証する考え方が紹介されています。
なぜ「良さそうな案」が決めきれないのか
未充足ニーズを発掘すると、「漏れない容器」「温かさが保てる容器」「捨てやすい容器」「開けやすい容器」など、どれも良さそうな案が並びます。 しかし、すべてを一度に実現することは難しく、どれを優先すべきかで議論が止まりがちです。
価格を評価軸に入れると、判断が一気に「現実モード」に引き戻され、せっかくの体験価値の議論がコストの話にすり替わってしまいます。 そこで今回のテーマは、「価格ではなく、体験価値そのものの重要度を見極める」ために、コンジョイント分析の考え方を使うというものです。
カレー弁当を例にした調査設計
例として、「持ち帰り後30分後に食べるカレー弁当」を想定し、容器以外の条件(味・見た目など)はすべて一定としたうえで、容器の違いだけを評価する設定が置かれています。 消費者には「容器単体」を体験の違いとして選択してもらい、購入〜持ち運び〜開封〜飲食〜廃棄という一連の流れの中で、どの価値がどれだけ重要かを測ります。
この体験プロセスから、消費者が感じる不安・面倒・気を使うポイントを抽出し、
持ち運びの安心感
蓋を開けるときの安心感
食べる直前のカレーの状態
容器の捨てやすさ
といった「属性」に分解します。 それぞれについて、消費者の言葉で具体的なレベル(例:「鞄の中に入れても向きや傾きを気にせず持ち歩ける」など)を設定するのがポイントです。
コンジョイント的に「体験の組み合わせ」を比較する
各属性に複数レベルを設定し、実験計画法の直交表(L9など)を用いて「9パターンの容器コンセプト」を作成するイメージが示されています。 これらのパターンを消費者に提示し、「どれを選ぶか」「どの程度魅力を感じるか」を評価してもらうことで、体験価値の重要度(重み)が数値的に見えてきます。
例えば、
鞄に入れても向きや傾きを気にせず持ち歩ける
蓋をゆっくり開ければ問題なく開封できる
30分後にちょうど良い状態で食べられる
中身がほとんど残らず手を汚さずに捨てられる
といった組み合わせは、多くの消費者にとって高い評価(5段階で4点程度)の価値があると想定されます。 このように、「どの体験がどれくらい効いているか」を比較できることで、開発投資の優先順位が明確になります。
技術仕様に落とし込むための解釈
体験としての最適な組み合わせが見えたあとは、それを技術仕様に翻訳していくステップが必要になります。 例えば、
持ち運びの安心感 → 蓋構造・シール性・内圧逃し設計
開封時の安心感 → 蓋の反発力・開封導線設計
食べる直前の状態 → 保温性・群れや水分移行の制御
捨てやすさ → 撥水性・油汚れ残りにくさ・素材設計
といった形で、体験価値を技術の言葉にブレイクダウンします。 実現可能性やコストの検討はその後の段階で行いますが、「何を目指すべきか」の優先順位が明確になっているため、技術検討がブレにくくなります。
