弁当容器は「漏れない・壊れない・電子レンジ対応」といった機能が当たり前になり、一見すると差別化の余地がない成熟領域に見えます。 しかし、実際に弁当を買って食べる側の体験に目を向けると、「開けるのが怖い」「こぼれるのが不安」といった未充足ニーズがまだ多く残っています。
メーカー視点と消費者視点の決定的なずれ
メーカーは容器の性能・構造・コストに強い関心を持ち、「漏れない」「保温性が高い」「耐熱温度」などスペックで価値を語りがちです。 一方で消費者は、弁当を持ち帰り、開封し、食べ終えるまでの体験や失敗経験で容器を評価しており、見ている世界が根本的に異なります。
例えば、弁当を開けたときに汁が漏れて手やカバンが汚れた経験、蓋を開ける瞬間の「こぼれていないか」という不安、美味しさを損なうような見た目の崩れなどが、消費者側の評価軸として強く影響します。 メーカーが語る「漏れない」「保温」と、消費者が感じる「怖くない」「がっかりしない」の間には、同じ言葉でも意味の違うギャップが存在します。
「おかず」起点で体験を具体化する
動画では、弁当容器を「何を入れるか」というおかず起点で捉え直すことで、未充足ニーズが見えやすくなると提案されています。 カレー、ハンバーグ、唐揚げ、中華の炒め物、麺類など、それぞれのおかずが持つ「失敗しやすさ」は異なります。
例えば、
カレー:汁物であり、漏れ・こぼれのダメージが大きく、開封時不安が高い。
ハンバーグ:ソースが多い場合は漏れリスクがあるが、見た目崩れは比較的少ない。
唐揚げ:群れやカリッと感の低下、入りきらず蓋に当たっていると「崩れ・汚れ」への不満につながる。
このように、おかずごとに「どんな失敗が起きやすいか」を具体化すると、消費者の体験起点で開発テーマを設定しやすくなります。
「体験定義」から始める弁当容器開発
未充足ニーズを捉えるキーは、「機能定義」ではなく「体験定義」から開発を始めることだと強調されています。 例えば、次のような体験を起点にテーマを立てるイメージです。
鞄に入れても怖くない弁当容器(持ち運び時の不安解消)
30分後に食べても味と見た目が劣化しにくい容器(時間経過の品質維持)
開けた瞬間に湯気や水滴でがっかりしない容器(開封時の感情価値)
技術的な要件(シール性、耐熱性、素材など)は、その後に最適化すべき要素であり、体験から逆算して決めるべきだと整理されています。 B2Bメーカーであっても、最終消費者の体験を起点に「おかず×体験」の構造を描くことで、自社技術の意味ある価値への変換が可能になります。
