製造業B2Bの経営層・中間管理職・企画/品質責任者の多くは、「トラブル対応で忙しい人は目立つのに、そもそも問題を起こさない人は評価されない」というジレンマを抱えています。 クレームや不良が起きた後の火消しは派手でわかりやすい一方、未然防止の成果は「起きなかったこと」であり、見えにくいがゆえに評価されにくいのが現実です。 本記事では、動画第2話で語られる「未然防止は成果として評価されない」という論点を軸に、火消し文化から問題発見・未然防止を評価する組織への転換ポイントを整理します。
1. なぜ未然防止が評価されないのか
動画では、未然防止は「起きなかった成果」であり、成果として非常に見えにくいことが指摘されています。 一方で、火消しはすでに炎上した問題に対する対応であり、結果が目立つため組織心理的に評価されやすくなります。
組織の評価は「目に見える結果」に偏りがちであり、経営が明確に意図しない限り、未然防止のような地味な活動は評価対象から外されやすいと説明されています。 その結果、「問題が起きなかったこと」ではなく、「問題が起きた後にどう対処したか」ばかりが注目される構造が生まれます。
2. 火消しのヒーローと犯人探しの構図
問題が顕在化すると、多くの組織ではまず「誰のせいか」が問われます。 動画では、火消しがヒーロー扱いされる一方で、ミスをした人・トラブルの当事者は「犯人」として扱われる構図が描かれています。
この構図では、常に誰かが犠牲になる前提で行動が進むため、根本的な構造改善ではなく、個人に責任を押し付ける方向に流れやすくなります。 犯人を生まないためには、そもそも問題が起きる前に手を打つ「未然防止文化」が必要であり、そこに価値を置かない限り、同じ火消しが繰り返されると整理されています。
3. 未然防止の価値をどう可視化・評価するか
動画では、未然防止の価値を評価する具体的な視点として、コスト削減・感情コストの削減・トラブル心理負荷の低減・生産性向上・利益率改善が挙げられています。 小さな手戻りや感情的な摩耗を前段階で抑えることが、結果として大きなコストインパクトを持つという位置づけです。
また、未然防止を評価するための仕組みとして、未然防止件数の見える化、異常の早期発見を評価指標とすること、情報共有スピードを評価すること、起こらなかったトラブルの価値を数字化することなどが提案されています。 トップダウンで「未然防止こそが組織の利益に直結する」というメッセージを打ち出す重要性も強調されています。
4. 売れない企画を未然に防ぐという発想
商品企画の観点では、「売れてから評価される一方、売れないことは評価されない」という現状が取り上げられています。 しかし、本来は売れるかどうかの大部分は発売前の企画段階で決まっており、そこでどれだけ「失敗しないようにしたか」が重要だと整理されています。
動画では、「ヒット商品は企画の才能ではなく、問題の芽を潰した回数で決まる」というメッセージが提示され、売れた理由の多くは『失敗しなかったこと』にあると述べられています。 問題解決(火消し)よりも、問題発見と未然防止の方が本質的な価値を持つと位置づけ、企画・品質双方での意識転換を促しています。
