組織の停滞を打破しようとしても、「良い方法論」を導入しただけでは現場は動きません。
実際に組織を動かす起点になるのは、仕組みではなく「指示者」と呼べる少数の人たちであり、その存在をどう見つけ、どう活かすかが鍵になります。

指示者を確認する理由
改善活動は多数決で始まるものではなく、少数の指示者から立ち上がるものだと説明されています。 指示者とは、危機感や課題意識、新しい気づきを持ち、自ら動こうとする初期推進者のことです。

全体のうち約20%とされるこの層が動き出すことで、中間層が揺れ始め、止まっていた組織の車輪が少しずつ回り出します。 改善の成否は「誰と始めるか」を見極めることに大きく左右されるため、最初に指示者を確認することが重要になります。

ボトムアップか、トップダウンか
現場改革を進めるルートには、大きくボトムアップとトップダウンの2つがあります。 それぞれに長所と限界があり、状況に応じた使い分けと組み合わせが必要だと整理されています。

トップダウン
指示系統が明確でスピードがあり、権限やルールの壁を一気に突破しやすいのが強みです。 一方で、現場の納得がないまま進めると「またトップが余計なことをしている」と反発や形だけの追従を招きがちです。

ボトムアップ
現場の創発力や団結力を生み、持続性も高い反面、権限やルールの制約で途中で止まってしまうリスクがあります。 トップの承認や権限移譲がなければ、「何をやっているのか」と否定され、エネルギーが尽きてしまうことも少なくありません。

最も望ましいのは、トップダウンとボトムアップの双方が機能するハイブリッド型であり、現場と経営の最適化を図ることが理想だと述べられています。

指示者を増やし、中間層を動かすには
実務上、本当に心から賛同してくれる指示者は最初は2〜3名程度にとどまることが多いと指摘されています。 そこで、いきなり大風呂敷を広げるのではなく、少数の味方とともに「小さな実験」と「小さな成功」を積み上げることが現実的なアプローチになります。

具体的には次のようなステップが示されています。

賛同する2〜3名の指示者と小さな実験・改善を行い、成果を見える化する。

その成果を中間層と共有し、「余計なこと」ではなく「役に立つ改善」であることを示し、不安やリスク感を和らげる。

トップ層には、障害突破と公認・予算・権限付与を求め、取り組みの正当性と継続性を担保する。

指示者が増え、中間層が巻き込まれていくと、組織全体の勢力バランスが変わり、改善のスピードが上がっていきます。 抵抗勢力は残るものの、「仏」として静観する層に変わるケースもあり、全員を変えようとするのではなく、動く側の比率を高める発想が現実的です。