「製品の品質は間違いなく高い。それなのになぜ、現場では使われず、売上も伸びないのか」

このような閉塞感に直面しているメーカーは少なくありません。特に、自社と消費者の間に別の企業(B)が介在するB2B2Cモデルにおいて、この問題は深刻です。優れた製品が市場で「拒絶」される背景には、技術力の不足ではなく、製品を取り巻くステークホルダーの「不都合な真実」を直視できていないという、問いの設計ミスが存在します。

現場という戦場を無視した「理想」の押し付け

製品を評価するのは、カタログ上のスペックを確認する決裁者だけではありません。真に製品の成否を握っているのは、日々の過酷な業務の中でその製品を扱う「現場の人間」です。

設置が極めて煩雑である、調整が職人芸のようにシビアである、あるいは顧客への説明に膨大な時間を要する。作り手が「付加価値」と考えている要素が、現場の担当者にとっては「業務を圧迫する負債」に変わっているケースが多々あります。多忙を極める現場において、既存のオペレーションを破壊してまでその製品を導入する必然性があるのか。この問いを置き去りにした開発は、どれほど品質が高くとも、現場の強力な抵抗に遭い、やがて市場から排除されます。

企業間の「責任の空白」が招くクレームと停滞

B2B2Cモデルにおけるもう一つの罠は、自社(B1)と仲介企業(B2)の間に生じる「責任と情報の断絶」です。

製品の保守点検やクレーム対応の責任主体が曖昧なままでは、現場の不満は蓄積される一方です。「使いにくい」「トラブルが起きる」という現場の声が、仲介企業のフィルターを通る中で歪められ、作り手には届かない。その結果、生産性に悪影響を及ぼすような致命的な欠陥が見過ごされ、最終的には「扱いにくい製品」というレッテルを貼られることになります。良質な製品であるという自負が、現場の悲鳴に対する感度を鈍らせてはいないでしょうか。

思考の設計:利便性の裏にある「コスト」を計算する

事業を再現性のある成功へと導くためには、製品単体の機能ではなく、それが導入された後の「負のコスト」を徹底的に洗い出す思考の設計が不可欠です。

  • 現場の作業員が「自分の仕事が楽になる」と直感できるか
  • 専門知識を持たない担当者でも、迷わずに運用できる設計か
  • 万が一のトラブルの際、現場に負担をかけずに解決する仕組みがあるか

「良いものを作れば売れる」という幻想を一度捨て、現場の担当者が抱くであろう「最後の手出し(抵抗感)」を言葉と設計で一つひとつ取り除いていくこと。この地道な問いの積み重ねこそが、B2B2Cという複雑な構造下で、製品を「選ばれ続ける資産」へと変える唯一の道となります。