問題は「売れない以前」に埋まっている
多くの企業では、「顧客の要望は聞いたのに、なぜか売れない」という状況に陥っています。 その原因は、仕様やスペックの前にある「問題以前の構造」、つまり顧客理解の前提に誤りがあるからです。
顧客は「安くしてほしい」「もっと便利に」「もっと早く」といった表層的な要望は語れても、自分の本当の課題や行動を阻害する要因までは言語化できていません。 その状態のまま市場調査やインタビューの“言葉”だけを頼りに企画を進めると、売れない構造をそのまま量産してしまいます。
顧客は自分の課題を認識していない
現場で「どこに課題がありますか?」と聞いても、多くの顧客は首をかしげるか、当たり障りのない不満しか出てこないことが少なくありません。 顧客自身が「なぜ困っているのか」「本当に解決したいのは何か」をはっきり整理できていないケースが圧倒的に多いからです。
このギャップを埋めるには、潜在・顕在ニーズをアンケートで集めるだけでは足りません。 顧客の行動・葛藤・無意識の選択を観察し、それを企画側が解釈・言語化して仮説に落とし込むことが必要になります。
「真層課題」をどう見つけるか
売れない構造の下には、顧客がまだ気づいていない「真層課題」があります。 これは、行動を止めている見えない障害や、価値判断の基準の曖昧さなど、顧客の口からはまず出てこない領域です。
価値創造型の企画では、
顧客が口にする「安く」「便利に」といった表層要望の奥にある
「本当は何に困っているのか」「なぜその行動をとれないのか」
を構造として炙り出すことが求められます。 優れた企画者は、この隠れた不便や違和感を先に言語化し、まだ誰も認識していない課題を商品化の起点にしています。
価値創造型・問題解決企画の3ステップ
価値創造型の問題解決企画は、「潜在課題を発見し、解決構造ごとデザインすること」と定義できます。 単に機能を足すのではなく、「どんな課題を、どのような体験の流れで解決するか」まで含めて組み立てるアプローチです。
基本となるステップは次の3つです。
潜在ニーズ・真層課題を見つける
顧客の行動や葛藤を観察し、「なぜそうしているのか」「なぜできていないのか」を構造として仮説化する。
課題解決の構造をデザインする
課題発見から解決までの一連のプロセス(導入・利用・定着)を設計し、どこでどんな価値を提供するかを具体化する。
新しいカテゴリー・土俵をつくる
既存の比較軸(価格・性能・スペック)だけに乗らず、「その課題を解決できるのはこのカテゴリーだけ」という状況を目指す。
この流れを企画初期から実践することで、「顧客の言うことは聞いたのに売れない」という失敗を未然に防ぐことができます。
未然防止としての価値創造企画
問題解決型企画の未然防止とは、「売れない商品を出さない仕組みを企画段階で組み込むこと」と言い換えられます。 顧客の表層的な声に反応するだけでなく、課題を自覚していない顧客の代わりに真層課題を発見し、その解決のストーリーまで設計することが重要です。
その結果として、売れない商品の量産を止め、数年後の市場や顧客行動を見据えた「未来志向の商品づくり」が可能になります。 企画段階でのこうした未然防止こそが、静かに強い商品ポートフォリオと収益構造を支える土台になります。
