9月1日~4日に開催されたICQ2025(International Conference on Quality)も後半に入り、会議全体を俯瞰すると、一つの大きな潮流が浮かび上がりました。それは「商品や技術の枠を超えて、人材をどう活かすか」というテーマです。
- 人材活用が企業競争力の源泉
多くの発表では、これまで強調されてきた「製品価値」「技術競争」から一歩進み、従業員一人ひとりの能力や経験をどう引き出すかに焦点が当てられていました。特に欧州の登壇者からは、EX(Employee Experience)の向上が組織全体のイノベーション力を高めるとの強調がありました。まさに「人が活きる組織」こそが価値創造の源泉といえるでしょう。
- TQMの再解釈 ― 宗教に例えられるほどの浸透力
ある発表者は「TQMは宗教のようだ」と表現しました。品質管理の枠を超え、組織文化や哲学そのものにTQMを組み込むことが、いかに有効であるかを強調していました。これは単なる手法ではなく、従業員の行動や意思決定を方向づける「拠り所」になっていることを示しています。
- 経営におけるフィロソフィーの重要性
さらに印象的だったのは、経営目標や中期計画の実現には「フィロソフィー」が不可欠だという報告です。トップ自らが哲学を語り、それを社員一人ひとりが理解・共感し、自分の行動目標にまで落とし込む。この流れがなければ、中計は単なる数字目標に終わってしまうとの指摘がありました。
これはまさに「価値経営(Value-based Management)」の本質であり、顧客価値だけでなく、従業員が働く意味ややりがいを共有することが、持続的成長を可能にするのだと感じました。
- データ思考の新たな応用 ― 商品企画から人材活用へ
私はこれまで、データ思考に基づく商品企画・価値検証をテーマに研究・実践を行ってきました。しかし今回の会議を通じて強く感じたのは、同じアプローチを人材育成や人材活用に展開できる可能性です。
例えば、従業員の潜在的な強みや価値観をデータとして可視化し、最適な役割や育成方針を設計すること。これは商品企画における「潜在ニーズ発掘」と極めて相似しています。商品ではなく「人の可能性」を企画・育成するという発想です。
- 今後の示唆
ICQ2025を通じて得られた大きな学びは、企業価値は「人材」から生まれるという点です。顧客価値(CX)、従業員価値(EX)、顧客満足(CS)は相互に関連し、EXを起点とした成長サイクルがますます注目されていくと感じました。
私自身も、商品企画で培った手法やデータ思考を人材活用の領域に応用し、経営全体の価値創造に貢献できるよう取り組んでいきたいと思います。